
株式会社AMBUSH 様
【enechain×AMBUSH®トップ対談】 グローバル視点で考える、これからの脱炭素経営とは
株式会社enechain 代表取締役社長 野澤遼(左)/ AMBUSH® CEO VERBAL 様
インタビューはAMBUSH® WORKSHOP(東京都渋谷区渋谷1丁目22-8)で行われた。
(撮影:森田晃博)
エネルギーとファッション。業界は違えど、世界レベルで深刻化する気候変動問題に向き合い、それぞれの立場からカーボンニュートラルの実現に取り組む両社。公私共に交流を深めている2人のトップ対談から、グローバルな視点で経営者が目指すべき未来のヒントを得る。

VERBAL
1999年にm-floのメンバーとしてデビュー。自身もDJ・音楽プロデューサーとして活動し、様々な音楽プロジェクトで世界的に注目を集める。VERBALがCEOを務めるブランド「AMBUSH®」は、世界中のメディアで注目されたアイコニックなPOW!®モチーフを始め、東京カルチャーを体現する革新的なポップアートにインスピレーションを得たデザインが特徴的。2016年9月2日、東京に初となるフラッグシップストアをOPEN。
気候変動問題に、どう向き合うか
野澤:
VERBALさんと初めてお会いしたのは、昨年末のForbesのGalaパーティでしたね。偶然、同じマンションに住んでいることがわかり、それがきっかけでディナーをご一緒しました。その時、お互いがアメリカの大学を卒業していることや、VERBALさんがHydeout Productionsのコンピレーションアルバムに参加されていた話で盛り上がりました。それ以来、音楽やファッションについて話す仲になりました。
VERBAL:
本当に偶然の出会いでしたよね。野澤さんが音楽やファッション好きな方で、お互いに共感できる部分が多いので、気兼ねなく話せるのが嬉しいです。もちろん、お互い経営者なので、仕事の話もよくします。その中で、enechainのビジネスや、気候変動問題の深刻さについても考える機会が増えました。
世界のCO₂排出量の約10%はファッション業界
野澤:
今日は深刻化する気候変動問題について話しましょう。今年の夏も本当に暑かったですね。1970年代と比べると、日本の猛暑日が5倍近く増えていると言われています。私たちが子供の頃に比べると、気温の上昇が実感できますよね。
VERBAL:
その通りですね。気候変動はもはや避けられない現実です。
野澤:
ファッション業界は、環境に大きな影響を与える業界の一つで、世界のCO₂排出量の約10%を占めていると言われています。日本も2050年までにカーボンニュートラルを達成することを目指していますが、全世界で需要と供給のサイクルは加速しており、その過程で消費されるエネルギーの削減が求められています。
VERBAL:
ファッション業界でも環境負荷軽減に向けて真剣に取り組み始めています。AMBUSH®としても、自社の活動が環境に与える影響を考え、低炭素の代替(サステナブル)素材の使用や、製造工程の見直しを進めています。

海外と日本では、サステナビリティに対する文化が異なる
野澤:
海外に多くのファンを持つAMBUSH®ならではの視点で、サステナビリティに対する社会からのプレッシャーについて教えていただけますか?
VERBAL:
特に海外のメディアからの取材では、デザインやコレクションに加えて、ブランドとしてのサステナビリティへの取り組みについてもよく聞かれます。消費者についても、海外では環境に配慮した製品を選ぶ方が増えていると感じます。例えば、欧米の消費者は、少し高価でも環境に優しい製品を選ぶ傾向がありますし、逆に問題のある企業の商品は購入しないという意識が強くなっています。
野澤:
欧州では、環境や社会問題に対する関心が高まり、企業に脱炭素を促す政策が次々と導入されていますね。例えば、排出量取引制度(ETS)や炭素税など、日本でも近い将来、企業への規制が強まると考えられます。これにより消費者の行動が変わり、サステナブルなブランドが選ばれるようになるでしょう。

VERBAL:
一例ですが、海外は、どんな人でもテクノロジーがインテグレートされていて、デザイナーであってもテクノロジーのリテラシーが高くEC領域についても当たり前のように議論します。専門領域に関係なく自ら主体的に知識を得て「我々はどうすべきか」を皆で議論する傾向があります。
野澤:
示唆に富んでいますね。環境問題においても、自ら知識を得て周りと対等に議論し行動する海外は、よりカルチャーレベルで環境配慮の意識が浸透していると言えるでしょう。「エコフレンドリー」の意識が海外で強いと感じるのは、このカルチャーが関係しているのかもしれません。
経営と環境配慮は両立できる
野澤:
AMBUSH®では具体的にどのような取り組みを行っているのでしょうか?
VERBAL:
まず、使用するエネルギーについては意識しており、直営店で利用する電力は全て再生可能エネルギー100%の電力を使用しています。特に福島の再生可能エネルギーを利用することで、地域復興にも貢献したいという思いがあります。
環境問題が可視化されていく中、AMBUSH®のようなまだ小さいブランドでもできることはないかと模索しており、まず自分たちから始めることで、同じような思いを持つ人たちへのメッセージになるといいなと思っています。
野澤:
10年前から福島の電力を利用しているとは驚きです。AMBUSH®では他にも環境に配慮した製品づくりに取り組んでいますよね。
VERBAL:
AMBUSH®では、環境配慮に敏感な社員が在籍していることもあり、リサイクル素材を使った製品の開発を積極的に進めています。例えば、リサイクル素材を使用したスニーカーを3Dプリンターで作るなど、技術を駆使してサステナブルな製品を提供しています。

VERBAL:
もともとアクセサリーブランドとして創業したこともあって、まずシルバーのリサイクルには力を入れています。直営店2周年、5周年記念の際には、リサイクルシルバーの限定リングを発売しました。一般消費者やジュエリー業者などから回収したジュエリーを精製する都市鉱山由来の100%リサイクルされたSILVER925を用いて、リングの内側にはアンブッシュが独自に名付けた「RECYCLE METAL SILVER」の略称「RMSV」の文字をリサイクルシルバーの証として刻印しました。全作業工程を公表できる状態で製造しています。
最近の風潮として、サステナブルなリサイクル商品=クールと捉えるように時代は進化してきています。ファッションに限らずですが、サステナブル素材は購入者側も環境配慮への貢献感を得られますし、そういった企業を応援したいと思う方も増えてきていると感じています。
経営サイドとしても、新しい資源を使って製造するかリサイクル資源を使って製造するかでコスト差分がそこまで変わらないのであれば、より環境に配慮したリサイクル素材を使うことにチャレンジしていきたいと考えています。
その他ではデッドストックの生地をパッチワークで仕上げたアップサイクルデニムコレクションを発売したりもしています。
例えばデザイン的に古くなってしまったなどの理由で破棄される素材を活用して、パッチワークした商品を製作しています。世界で評価されている日本のデニムにビンテージ素材を活用すれば希少価値はさらに高まりますし、日本のブランドとしてサステナビリティに繋がる取り組みをしているというメッセージに繋がっていくと考えています。
脱炭素経営の選択肢としてのカーボンオフセット取引
VERBAL:
自分達にできることに取り組んでは来ましたが、他にもできることはないか野澤さんに相談しました。そこで今回、enechainが運営する環境価値の取引を行うマーケットプレイスである「JCEX」を通じて、カーボンオフセット取引を行うことにしました。
野澤:
一連のサプライチェーンの中で、自社で燃料を燃焼したり店舗などの電気の使用に伴って排出されるCO₂のオフセットですね。いわゆるScope1/Scope2に該当する部分。カーボンオフセット取引でJCEXを利用した感想はいかがでしたか?

VERBAL:
AMBUSH®では既に直営店でRE100の電力を利用していたので、今回は渋谷パルコやGinza Sixなど、百貨店内の店舗で使用する電力についてオフセット取引を行いました。当初は、CO₂排出量の算定やカーボンオフセット取引が複雑なのではと不安でしたが、enechainのエキスパートがサポートしてくれたおかげで、スムーズに進めることができました。

野澤:
結果としてAMBUSH®の2023年のScope1/Scope2での年間CO₂排出量は実質ゼロを達成しました。
VERBAL:
CO₂の排出量を自主的に抑えること以外に、カーボンオフセットという手段も手に入れられたことで、脱炭素経営の幅が広がりました。
実際、CO₂排出量の算定やカーボンオフセット取引を実施しようと思っても誰に相談していいかわからないと思うのですが、enechainが窓口になっていただいたからこそ実現できたのだと思います。
私たちの「価格」や「品質」に関する希望をしっかりと聞いてもらい、再生可能エネルギー由来のカーボンクレジットを希望する価格で購入できたのも大きなメリットでした。取引を短期間で実現できた点も良かったです。
今後はさらにScope3も含めたバリューチェーン全体のCO₂排出量の削減にも取り組んでいきたいと考えています。
野澤:
自らできることは率先して行動しつつ、ラストワンマイルの取引をenechainで実現している。この領域は専門性が高いイメージはあるかもしれませんが、専門のエキスパートがサポートしますので、安心して取引ができます。取引所なので価格も透明化されています。
VERBAL:
また、enechainが手掛ける「gCamp」という企業向けe-learningコンテンツも視聴しましたが、気候変動や脱炭素に関する知識をアップデートするのに非常に役立ちました。

野澤:
それは嬉しいです。gCampは、UXとしてニュース番組を見ているかのような建付けで、イラストやチャートを多用しています。コンテンツも、気候変動問題の背景から、国内外の政策動向や企業の取り組み事例など、専門的な内容まで網羅的にカバーしているので、初学者が構造的に知識をアップデートできるとても良いツールです。各講義も15分程度とコンパクトで、就寝前のスキマ時間にスマホで視聴できますし、受講者には最新のGX関連情報を定期的にレポートする特典もあります。

VERBAL:
エネルギーや環境のエキスパートではない初学者でも理解できる、わかりやすいコンテンツとなっています。これから脱炭素経営に取り組む経営者にもお薦めです。
サプライチェーン全体で脱炭素を推進
野澤:
最後に、AMBUSH®の今後の展望について教えてください。脱炭素経営に向けて、今後どのような取り組みを進めていく予定ですか?
VERBAL:
サステナブルな取り組みは、短期的なアピールではなく「継続性」が重要です。JCEXでのカーボンオフセット取引も、サステナブルファッションを実現するための第一歩に過ぎません。もちろん、経営者として脱炭素に関連する法令・法規制への戦略的な対策も意識しています。これからも、環境への影響を最小限に抑えるために、特にサプライチェーン全体でのCO₂排出量を削減する取り組みに力を入れていくつもりです。設計・調達・製作・販売全ての行程で、これまで以上にCO₂排出量を意識したいですね。製造過程での排出量削減は決して簡単ではありませんが、長期的な視点で継続的に取り組むことこそが重要だと考えています。

野澤:
「継続性」は非常に重要な要素ですね。サプライチェーン全体での改革は、長期的に持続可能なビジネスモデルを構築するためには不可欠なステップです。AMBUSH®の今回の取り組みを見て、経営者の方々にも脱炭素の取り組みに挑戦してほしいと思います。
VERBAL:
そうですね。脱炭素は、エコシステム全体が一体となって取り組むことで、初めて大きなインパクトが生まれると思います。AMBUSH®をはじめ、ファッションブランドでもこうした取り組みを実践しているということが広まれば、脱炭素経営に挑戦する皆さんにも勇気を与えられると思います。
企業
株式会社AMBUSH 様
規模
〜100名
業種
小売
サービス
JCEX
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